引き続き、子供をいかにしてバイリンガルに育てるかという問題です。今回は英語習得について書きます。
我が家の長女も次女もロサンゼルス生まれのアメリカ市民。その後、2年弱の英連邦王国のとある途上国で生活。その後、計7年半となる2回のニューヨークでの生活。2回のニューヨーク生活の間は、5年半の日本でアメリカン・スクール(ASIJ)への通学。そして現在、長女はアメリカ北東部の私立大学2年生、次女はある州のボーディングスクールのG11。
したがって、我が家の娘たちはネイティブなので、英語について家庭で何か特別なことをしたことは、一度しかありません。それは、2007年から2009年にかけてマンハッタンに住んでいた頃、長女が5歳、次女が3歳でしたが、アメリカのKumonの英語のCDの教材を使って、リスニングと発音の学習をしたことがあります。
なぜこの学習をさせたかというと、当時は、いつまでアメリカに駐在できるか分からなかったこと、帰国後、日本のアメリカン・スクール(ASIJ)に通うことはまだ検討していなかったこと、更に、その後、2016年にまたニューヨークに戻ってくるとは夢にも思っていなかったことなどもあり、巷の駐在の親が考えるように、子供にできるだけ正確な英語を身につけて欲しい、という気持ちが強かったからです。
実は、2005年から2007年にかけて英連邦王国のある途上国に住んでいた頃、今のこのブログとは異なるブログで、「バイリンガル」について書いたことがあります。以下、ちょっと長いですが、そのまま引用しますね。
(以下、引用)
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https://newyork-newyork.hatenadiary.org/entry/20070404
2007-04-04
言葉の問題:バイリンガル
娘二人は、生まれてから今まで現地の学校(英語)に通ってます。とはいっても4歳7ヶ月と2歳4ヶ月なので、彼女たちの英語力はしれておりますが。。。でも長女からは、彼女の同級生の名前の発音を直されます。「Ashlyn」ちゃんは、どうも「アシュリン」ではなく、気持ち「アシュラン」に近いようです。
これからバイリンガル以上に育てていくつもりですので、家では私たち親は完全に日本語を話しています。このような環境では、子供の「言葉」の発達が、英語はもちろんのこと、母国語である日本語についても、日本で生まれ日本で育っている同い年の子供たちと比較して、明らかに「遅い」です。でもあまり心配していません。子供の言葉の能力は計り知れないものがありますから。
最近は、友人からもらった「アンパンマン」のビデオに娘二人ともはまってます。長女は4歳7ヶ月なので、「アンパンマン」にはまるにはちょっと年齢が高いそうですが。。。日本の同年代の女の子は、「プリキュア」なんかにはまってるみたいです。
まあ、娘二人とも学校では英語漬けなので、家では100%日本語を貫き通そうと思います。というのは、私は外国で子供を育てているいろんな日本人の方というか、教育例を知っているからです。
例えば、ロサンゼルスに住んでいるA子さん。彼女は、白人のアメリカ人の夫との間に長男をもうけ、生まれた直後に離婚して現在一人で育てています。彼女の息子さんはもう小学校5年生なんですが、彼女はこれまで家では日本語で育ててきました。でも、息子さんが小学校3年生を超えたあたりから、息子との会話が、彼女が日本語で話しても息子さんは英語で話をかえすようになってしまい、最近では息子さんからの話は、とうとう英語オンリーになっているそうです。息子さんは、母親が日本語で話す意味は分かっているようなんですが、学校や友達は全部英語なので、英語が楽なんだそうです。もちろん、息子さんはこれまで日本語学校や補修校に行ったことがありません。通信教育もやったことがありません。
これはほんの一例ですが、いろんな環境・状況がありますので、こうあるべきだというものは、なかなか分からないものなので、最後は親の勝手というか、決断の問題となってしまいます。
よく、帰国子女の親の悩みとして、「日本語も英語も中途半端になってしまう」という話しを聞きます。しかし、これは、「親の駐在の期間」、「子供の年齢」等をよく見極めないと、誤解を生みます。親の駐在が3年程度では、子供の英語は、年齢にもよりますが、英語圏国の社会で通用するレベルに到達するわけがないと思います。
外国人が英語が残る年齢というのはいろいろ段階があるようです。以下は、最低5年は現地校に通うということが前提です。
1.「0歳から5歳まで」
例えその後アメリカを離れても、現地の保育園に2歳くらいから行っていれば、その後英語を全く忘れても英語の音感・語感は頭に残っていると言われています。私の友人はオーストラリアで生まれ5歳まで生活していましたが、その後日本に帰り普通の日本語教育を経て大人になりました。彼は、英語はあまり話せませんが、英語のヒヤリング能力は相当高いです。まあ、これも他の要因があるとは思いますが。
2.「4歳から9歳までの壁」
この時期は、発音が確立する時期です。つまりこの時期に5年間アメリカやイギリスにいると、発音はネイティブ・レベルとなります。ということは、勿論子供によりますが、10歳からアメリカに移民し、その後ずっとアメリカの教育を受けても、「発音」はネイティブになれない、ということになります。でも、「発音」がネイティブであるかどうかは、大人になって英語を使って仕事をする上では、実は大した問題ではありません。「発音」がネイティブでなくても、ドイツ生まれのドイツ人で15歳の時にアメリカに移住したヘンリー・キッシンジャー氏のように米国務長官になれますし、オーストリアのウィーン生まれのオーストリア人で、12歳の時にアメリカに移住したフェリックス・フランクフルター(Felix Frankfurter)氏のように米連邦最高裁判所判事(フランクリン・ルーズベルト大統領が任命)にもなれます。
3.「10歳から12歳頃」
この時期は、英語での思考能力が確立する時期です。思考能力が確立するということは、その後日本に帰っても、英語を忘れないということです。滞在期間は5年間が目安ですから、例えば6歳から11歳までアメリカで生活をし、その後、日本に帰っても、英語を一生忘れないということです。
以上3つの時期を書きましたが、目的が大人になって英語を操って仕事をするということであれば、これらの時期はある程度大事であっても、絶対必要な時期ではありません。大学からアメリカに行ったり、大学院からアメリカに行って、アメリカで成功している日本人はごまんといます。例えばアメリカで活躍している学者・研究者・ビジネスマンはたくさんいますよね。
しかし、そういう日本人でも、アメリカ社会で就ける仕事の種類・範囲は、「ネイティブ」と比較すると「当然」極端に少ないです。大人になって初めてアメリカに渡り、アメリカの大学のロースクールに行ってアメリカの弁護士になっても、どうしても日系の弁護士事務所とか、「会社」関係の弁護士になってしまいます。アメリカ人同士の民事担当として裁判所で陪審員に訴えている弁護士とか裁判官になっている日本人なんて聞いたことがありません。また、日系アメリカ人ではなく、「日本生まれで日本育ちの日本人」のローカル・テレビのキャスターどころか、お天気おじさん・おねえさんさえいません。
ちょっと話がそれましたので、子供の年齢の話に戻ります。
12歳以上になって「初めて」アメリカやイギリスの学校に行くと、英語をマスターすることに時間がかかり、その期間、英語で学習した中味が身につかないという「知の空白」が生まれてしまいます。特に、アメリカやイギリスは、12歳を超えると、(日本でもそうですが)大学を意識した教育となり、英語で生活をしたことがない子供にとっては、英語自体大変なのに、勉強の中味にはなお更ついていけず、毎晩、親が宿題を夜中過ぎまで手伝っているというのが現状のようです。勉強の中味の大変さについては、実は小学校4年生でも同じであり、特にabcも知らない子供が突然アメリカの小学校4年生になると、うわべだけでも英語の会話ができるようになるのは、2〜3年はかかりますから、親の方が毎晩泣きながら宿題を手伝っています。
したがって、外国に来る子供の年齢が低ければ低いほど、親は「楽」ということのようです。
いろいろ考えたり、体験記を読んだり、学術論文を読むと、本当に子供は親の被害者だなと思います。親の勝手で外国に行くわけですから。
私の娘のケースは、二人とも外国生まれで、これまで日本で生活したことがないので、若干事情が異なります。でも、今後私がニューヨークに何年いるのか、その後、どこに行くのか、全く分かりません。悩みはつきません。
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(以上、引用終わり)
15年近く前の私のブログの記事ですので、少し生意気で偉そうな感じですね。でも、バイリンガルについての分析は、そこまで的外れではないと今でも思っています。特に、発音が完璧である必要はない点や、「知の空白」問題については、親として子供の教育/人生について真剣に考えれば考えるほど、深く考慮すべきことだと思っています。
上記ブログの記事で修正すべき点は、外国人たる日本人は、そもそもアメリカで裁判官にはなれないので、裁判官の例を出すべきではありませんでした。また、お天気おじさん・おねえさんの例もそうです。各TV局は、外国人たる日本人に対し、お天気おじさん・おねえさんになるために、彼らのビザ発給のためのスポンサーになることは決してないでしょう。