Saturday, November 4, 2023

イスラエル・ハマス戦争:ロシア、中国を有利に?

イスラエルとハマスの戦争は、世界のパワーバランスに影響を及ぼしているようです。米国が軍事的資源を使いまくっていることは、ロシアに対する圧力を和らげています。中国にも新たな機会を与えるものです。

10月7日のハマスのイスラエルのテロ攻撃で始まったこの戦争は、今や世界の注目がガザの人道的支援に焦点が当てられており、イスラエルを支持する西側諸国の世界的な地位が変わりつつあります。

中国やロシア・イランは、西側諸国主導で作られた国際システムの弱体化を目指しており、今回の戦争を利用して、米国の関心分野が分散される状況につけ込んでいます。

シアが批判する西側諸国のウクライナとガザのダブルスタンダードは、反論するのが難しい状況になりつつあります。西側諸国はロシアによるウクライナ民間人の大虐殺を厳しく非難してきましたが、ガザでのイスラエルの行動に対しては、批判するとしても穏やかなものにとどまっているからです。そして、ロシアは、ロシアが行なっている殺戮行為を正当化しようとしています。

イスラエル・ガザ戦争は、ロシアにとって有利に働いているというわけです。イスラエル・ガザ戦争が長引けば長引くほど、世の中のロシア・ウクライナ戦争への関心が薄れ、ガザの人道状況が悪くなればなるほど、西側諸国のロシアへの批判をかわすことができるでしょう。

中国は、ハマスのイスラエルの攻撃で中国人が4人殺され、3人が今でも人質に取られているにもかかわらず、その攻撃をテロ攻撃と呼んでません。中国はウイグル自治区のウイグル人を弾圧する際、何度もテロと戦う必要性を主張してきたことと対照的です。

中国にとり、米国が中東問題に関心が集中し、アジア太平洋に関心が行かなくなることを好都合です。米国の影響力とイメージが損なわれることは中国の利益となるでしょう。中国を米国に代わる選択肢、より魅力的な選択肢として開発途上国に売り込むことができるかもしれません。

しかし、中国はまだ、イスラエル・ガザ戦争への軍事力などを背景とする影響力は持っていないのが、米国との大きな差でしょうか。

イスラエル・ハマス戦争は、インドにも悪影響を与えています。本年9月、米国とインドは、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、ヨルダン、イスラエルを経由してインド、中東、欧州をつなぐ「経済回廊構想」を発表しています。これは中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗するものです。しかし、イスラエル・ハマス戦争により、この計画の重要な要素であるイスラエルとサウジの国交正常化交渉が頓挫したため、「経済回廊構想」の先行きは不透明になっています。

イスラエル・ハマス戦争により、地域的な緊張の高まりや、ウクライナに対する関心の低下に加え、エネルギー危機を引き起こし、中東がロシア産石油・ガスの代替手段として機能しなくなる可能性もあるかもしれません。

そして、米国がイスラエルとウクライナを支援しつつ、台湾への関与も維持できるのかが注目されています。

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