Friday, October 21, 2022

超円安(1ドル150円突破)! 

 数十年ぶりに1ドル150円を突破していますが、日銀の長短金利操作政策が限界へと追い詰められているそうです。


10年物国債利回りを0.25%以下に抑えるこの政策を、日銀が撤廃、あるいは修正しただけでも円は急騰する可能性があるからです。


主要国の中で今年、金融引き締めを行っていない中央銀行は日銀だけです。日銀の超緩和政策は投資資金の国外流出を加速させ、円の歴史的な下落に貢献しています。


しかし日本の金利見通しが急に変化すれば、大量の資金が日本に還流する可能性があります。日本は世界最大の純債権国です。日本が保有する外国の資産と、外国人が保有する日本の資産の差である対外資産負債残高は6月末時点で3兆2900億ドルでした。国際通貨基金(IMF)の推計では、公的準備を含む日本の対外資産9兆9600億ドルのうち、約3兆7000億ドルは株式関係、約5兆7000億ドルは債券関係の投資となっています。このうち、ほんの一部が日本に還流しただけでも円相場を押し上げる可能性があります。日本の投資家による資金還流は過去にも為替レートを大きく動かしてきました。


日本の対外・対内証券投資は7兆3000億ドル前後と巨額で、為替レートが急激に変動すると投資家の世界的なレバレッジ、ヘッジ、デリバティブ投資にショックを広げかねません。


日銀は現在、長短金利操作政策をさらに積極的に推進し、デフレの脅威を根絶するために大量の国債を買い続けています。IMFも、市場が不安定な状態にあることを理由に長短金利操作政策を修正しないよう釘を刺しています。


しかし圧力は蓄積しています。10年物国債利回りが繰り返し0.25%の上限を突破しました。日本の投資家は年度末のバランスシートを良く見せるため、例年1─3月期に資金を本国に送還します。今年3月に向けても差し引き約1600億ドルの証券投資資金が日本に還流しました。しかしその後、日本人の海外資産需要は急増し、4─6月期の対外株式・債券投資は約1200億ドルに達し、7─9月期も対外投資が続きました。


他方、日本の銀行にある個人投資家の外貨預金は8月末時点で26兆5800億円と、年初から8.3%増えています。日銀のデータによると、1月から8月にかけての増加率は2015年以来で最高でした。


日本の投資家は円高になると外貨を買い、円安になると外貨を売る傾向があるため、今年の現象は異例だそうです。日本の金利が上昇した場合、この大量の外貨預金が解約されて円を押し上げるもう一つの要因になるかもしれないとのこと。


ドルが今年、対円で約30%と過去最大の上げ幅を記録した背景には日米の金利差があります。しかし、ドル/円が天井を打つのは近く、来年初めには140円に下がると予想している機関もあります。長短金利操作政策の修正が相場を動かすことになるが、相場変動の度合いは、日本国債と同様に米国債の利回りにも大きく左右されると思われます。円相場を押し上げる突然の資金還流は米国債利回りが低下する局面で起こる可能性があります。


英国では、リズ・トラス首相が辞任しました。高インフレと金利上昇がいかに政局を左右するかを証明しました。英国では現在、債務の国内総生産(GDP)比は約100%で、コロナ流行前の約80%を上回っています。トラス前首相とクワシ・クワーテング前財務相は減税に加え、家計と企業を守るために数十億ポンドの補助金をばらまくことで、経済成長を促そうとしました。問題はその財源で、歳出削減ではなく借り入れによって賄おうとしたことです。


市場の反応は非常に厳しく、ポンドは過去最安値に沈みました。英国債は猛烈な売りを浴び、年金市場で予想外の問題が発生し、混乱が拡大したことから、イングランド銀行(中央銀行)は介入を余儀なくされ、英国債市場を安定させるために数十億ポンドを投じました。 


一部の経済学者は、金利が上昇している時に財源なき公約を示すという、時期も内容も誤った財政政策だったと厳しく批判しています。トラス首相はその後、計画の一部撤回を余儀なくされ、所属する保守党内の圧力で辞任に追い込まれました。


英国のジェレミー・ハント新財務相は、減税案のほぼ全てを棚上げした上で、今後数年で債務を抑制するため非常に厳しい歳出削減を行うと約束し、保守党が数週間か数カ月のうちに難しい判断を迫られることを示唆しました。英国の借り入れコストは再び急低下し、ポンドは上昇しています。


トラス前首相の首相就任前、英国債利回りは米国債利回りを大幅に下回っていましたが、減税計画を発表すると、この関係は逆転し、英国債利回りが急上昇しました。英国債利回りは数日のうちに、米国債利回りを0.5ポイント超上回る水準へ上昇しました。年金市場のデリバティブ(金融派生商品)に関連した問題が、英国債利回りの上昇に拍車を掛けました。


英政府がこの計画を一部撤回すると、英米国債のスプレッド(利回り差)が再び逆転しました。10月20日には英国債利回りが3.910%、米国債利回りが4.210%となりました。 


これにより世界中の政府が市場の力を思い知らされたかもしれません。市場が嫌気すれば、国債は売りを浴び、借り入れコストが急上昇するというわけです。


トラス首相の後任が誰であっても、財政規律を守っていることを金融市場に示すために、中期財政計画に財政引き締めを盛り込む必要があるでしょう。従来の緩和策を撤回するだけでは済まないとも言われています。


イングランド銀行は最近、国債の買い入れを終了するだけでなく、国債を積極的に売却する「量的引き締め」を行うと発表しました。欧州中央銀行(ECB)も来年、これに続く見通しです。


経済学者らは英政府が減税策を一部撤回した後でも、政府の財政目標を達成するには300億~400億ポンドの歳出削減か増税が必要と推計しています。問題の一つは、新政府が年間インフレ率(9月は10.1%)に合わせて福祉給付を引き上げるかどうかです。政府がこれをインフインフレ率よりも大幅に低い賃金上昇率に連動させれば数十億ポンドの節約になるものの、政治的な影響が出たり、すでに苦境にある家計をさらに圧迫したりする恐れがあります。


イングランド銀行は、金融市場の参加者が織り込んでいるほど政策金利を引き上げない可能性があります。市場参加者は政策金利(現在は2.25%)が来年に5.25%前後でピークに達すると予想しており、そこまで利上げすれば英国は深刻な景気後退に陥る可能性が高くなります。

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