日本のウィスキーが国際的に評価され、国際品評会で賞を受けることが多くなってきました。私も山崎25年、響17年、竹鶴21年、余市、高峰譲吉など封を開けないまま持っていますが、もう手に入らないと聞いたので、怖くて飲めていません。
日本が世界5大ウイスキー産地(英スコットランド・アイルランド・米国・カナダ)の一つに数えられるようになり、国内外での人気は半端ないです。日本では、消費量も輸出量も過去最高を記録しているそうです。
このように日本のウィスキーの質は、世界で有名になりましたが、実は「日本産ウィスキー」は、本質的な問題点を抱えています。
日本の酒税法上、「日本ウィスキー」の明確な定義はないんです。
スコットランドや米国ではウィスキーの製法や表記について、厳しく法律で定められていますが、日本の酒税法では、例えば、輸入した原酒を国内でブレンドしたりボトル詰めするだけでも「国産」と表示できるんです。
酒税法上、1)国内で作られたモルトウィスキー、またはグレーンウィスキー(注)が10%で、残りの90%が醸造アルコールのウィスキー、2)海外から輸入したウィスキーを日本で瓶詰めしたウィスキー、3)大麦麦芽を糖化・発酵・蒸留し、その後、樽で熟成せずに瓶詰めしたウィスキー、のどれでも「国産ウィスキー」と呼べるそうです。
(注)グレーンウィスキー
とうもろこし、ライ麦、小麦などの穀類を主原料とし、そこに大麦麦芽を糖化酵素として加え製造されたウィスキー
日本の安価なウィスキーは、モルト原酒とグレーン原酒をブレンドして作られています。しかし、その比率は公表されていなんです。国内法上、公表する義務はありません。安価なスコットランド産のグレーンウイスキーが使われていることが多いそうです。
また、日本で生産されるモルトウィスキーの多くは、輸入されたモルト原酒をブレンドされて作られています。自社で蒸留した原酒に海外から輸入した原酒を加えてブレンドしているのが現実です。
真面目なウィスキー会社は、このようなウィスキーの表記から「ジャパニーズ」という文言を削除しています。しかし、商品名を漢字の日本語表記にしているウィスキーは、外国の方からすると、「日本産ウィスキー」と勘違いすると思います。
酒税法のさらなる問題は、原産地以前に、サトウキビの搾りかすなどを原料にした醸造(ブレンド用)アルコールやウォッカなどのスピリッツの混和を90%まで認めていることです。
一部のウィスキーには、原材料欄にスピリッツやブレンド用アルコールと記載されているものもあります。しかし、このような表記は業界の自主努力であり、表記しなくてもなんら酒税法違反ではないのです。
「ブレンド用アルコール」を使っても「ウイスキー」を名乗れるというのは、他の世界5大産地ではありえません。
酒税法の問題点を繰り返しになりますが改めて指摘します。
1)生産場所
日本の酒税法には、生産場所に関する規定がありません。他の世界5大ウィスキーには、いずれも生産場所に関する規定があります。特にスコットランド、アイルランド、カナダでは、蒸留または熟成(もしくは両方)を国内で行うと定義されています。アメリカでは、テネシー・ウィスキーを除いては生産場所に関する規定はありません。
2)樽熟成
樽熟成については多くの国で詳しい規定があります。スコットランドやアイルランド、カナダでは、オーク樽で3年以上熟成させなければなりません。アメリカでは樽熟成さえすれば期間は問われませんが、バーボン・ウィスキーやテネシー・ウィスキーは2年以上の熟成が求められています。
しかし日本の酒税法では、そもそも「樽」どころか、「熟成」についての言及がありません。したがって、熟成せずともウィスキーを名乗ることができます。また、「樽以外の容器」に5年貯蔵したようなウィスキーも、「5年熟成」の「ジャパニーズウィスキー」と謳うことが可能です。
3)瓶詰めのアルコール度数
スコットランド、アメリカ、カナダでは、アルコール度数40%以上で瓶詰めすることが義務付けられています。アイルランドと日本は、瓶詰めのアルコール度数の規定はありません。
日本の酒税法が曖昧であることに加え、上記1)〜3)の不備もあるため、結果として、①外国産ウィスキーと日本産ウィスキーを混ぜても「ジャパニーズウィスキー」、②中身が100%外国産ウィスキーであっても国内で瓶詰めしていれば「ジャパニーズウィスキー」と表記してもよいわけです。
酒税法の最大の問題は、「モルトウィスキーあるいはグレーンウィスキーが10%入っていれば、残りが醸造(ブレンド用)アルコールでもジンやウォッカでも、ウィスキーと認めていることです。
要するに、日本では、「90%がウォッカー、10%がモルトまたはグレーン・ウィスキーのブレンド」でも、日本では、「ウィスキー」と呼べるし、実際に呼んでいるんです。
現実問題として、低価格帯の日本のウィスキーには、ウィスキー以外のスピリッツや醸造アルコールを混ぜた、ウィスキー風のアルコール飲料が非常に多いです。
他の5大ウィスキー産地では、醸造アルコールを使ったら「ウィスキー」を名乗ることは、これらの国の国内法上できません。
ウィスキー愛好家としては、日本のウィスキーの現状が、法改正も含めて、なんとか改善されることを願ってやみません。
No comments:
Post a Comment