Saturday, September 23, 2023

中国経済の「日本化」?

現在の中国の経済は、「日本化」していると言われています。


(中国経済の日本化)

「日本化」とは、日本が1990年代以降、好況から低成長、人口減少、デフレへと移行した経済停滞をさすようです。現在の中国経済が似たような様相を呈していると多くのエコノミストが指摘しています。


もっとも、中国の問題は多くの面で日本よりも扱いにくいかもしれません。一部の指標では、中国の公的債務残高は当時の日本よりも多く、人口構成はより厳しいです。中国が直面している地政学的緊張は、かつて日本が直面した対米貿易摩擦を超越しています。また、民間部門を厳しく取り締まっている中国政府は、イデオロギー的に当時の日本政府よりも経済成長の支援に消極的に見えています。


中国政府がもっと強力な措置を取らなければ、日本と同様の長期的な景気低迷に陥る可能性があるとの指摘もあります。中国政府はここ数週間、緩やかな金利引き下げなどの断片的な施策は講じましたが、成長回復に向けた大型刺激策の導入は控えています。


果たして、中国は「日本化」に向かうのでしょうか。中国の全般的な成長見通しは、以前の日本よりも急速に悪化している可能性があるとの見方もあります。


(日本との共通点)

現在の中国と30年前の日本には、重債務、高齢化、デフレの兆候など、多くの共通点があります。


(日本のバブル崩壊)

戦後の長い景気拡大期に日本は輸出大国となり、その後、90年代初頭に不動産と株式市場のバブルが崩壊し、経済は急速に衰えました。政策当局者が金利を事実上ゼロまで引き下げたものの、消費者や企業は新規の支出・投資に向けた借り入れではなく、債務返済によるバランスシートの修復に集中したため、成長は回復しませんでした。


(中国のバブル崩壊?)

中国でもまた、桁外れの経済成長が長年続いた後、不動産バブルがはじけました。中国政府は借り入れや消費促進に努めていますが、消費者は住宅ローンを繰り上げ返済しています。

民間企業も金利低下にもかかわらず投資に消極的で、中国では金融緩和が効力を失いつつあるのではないかという指摘もあります。


(中国の強み:日本との違い)
一方で、日本のような長年の経済停滞に中国が陥るとは限らないとの指摘もあります。中国には日本になかった強みがいくつかあります。

(1)まず、今後数年間の経済成長率は、90年代の日本をはるかに上回る公算が大きいことが挙げられます。

(2)中国の資産バブルはかつての日本ほど大きくありません。国内総生産(GDP)に対する不動産価格の比率は2014年時点で170%、20年には260%でピークに達しました。中国政府統計によれば、住宅価格はこのピークからわずかに下落したにとどまっています。株式市場の価値は21年にGDP比80%という直近のピークを迎えましたが、現在は67%となっています。
 日本ではGDPに占める地価の割合が1990年には560%に達しましたが、94年には394%まで下落。1982年にはGDPの34%だった東京証券取引所の時価総額は、89年には142%まで上昇しました。

(3)現在の中国の強みとして
都市化率の低さも指摘されています。日本では1988年時点の都市化率が77%でしたが、中国では2022年で65%となっています。人々が都市に移住して非農業部門の仕事に就くことで、生産性と成長率を高められる可能性があります。

(4)また、中国は資本市場の管理が厳格で、輸出に打撃を与える急速な通貨高のリスクは低いと言われています。日本はここ数十年の間に何度か急激な円高への対応に迫られ、それが経済的苦境を助長することもありました。

以上の点を勘案すると、中国がバランスシート不況に陥るという懸念は行き過ぎだと指摘するエコノミストもいます。


(日本よりも対応が難しい中国の問題)

しかし、現在の中国経済は、日本よりも対応が難しい問題が多くあるとの指摘もあります。

(1)まず、中国のほうが高齢化が深刻で、人口は2022年に減少に転じました。日本で人口が減り始めたのは2008年以降で、バブル崩壊からは20年近くたっていました。

(2)また、中国は先進国の地位を獲得する前に長期的な成長率低下の時期に突入します。豊かになる前に年を取ってしまうということです。2022年の中国の一人当たり所得は1万2850ドルで、1991年の日本の2万9080ドルをはるかに下回っています。

(3)債務の問題もあります。中国の地方政府によるバランスシート外の借り入れも含めると、中国の公的債務総額は2022年にGDPの95%に達したとみられていますが、日本の1991年時点の対GDP比率は62%でした。中国当局が財政刺激策を追求する能力は限られるとも言われています。

(4)外圧も中国のほうが圧倒的に厳しいです。日本は貿易相手国から多くの非難を浴びましたが、安全保障面で米国と同盟関係にあり、現在の米中関係の「新冷戦」のリスクは存在しませんでした。現在、米国と同盟国は、中国の先端技術へのアクセスを阻止し、同国のサプライチェーンへの依存を軽減しようと努めています。これが今年、対中直接投資の急減を引き起こし、長期的には成長を大幅に減速させる可能性もあります。

(5)中国政府が長期停滞のリスクを過小評価し、その回避に向けた取り組みを怠っているとの懸念もあります。主要金利の緩やかな引き下げ、マンション購入額に占める頭金の比率引き下げ、民間部門への声高な支援表明は、これまでのところ信頼感の回復にほとんどつながっていません。中国を再び成長軌道に乗せるためには、財政・金融・不動産の各政策でより協調的な緩和が必要であるとの指摘もあります。ただ、習近平国家主席は家計や消費者に対する政府支援は「福祉主義」だとして、拡充には思想的に反対の立場です。


果たして、中国の「日本化」はあるのでしょうか。。。



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