Sunday, October 1, 2023

米連邦議会上下両院で「つなぎ予算」可決、バイデン大統領が署名し成立

9月30日夜、米議会上下両院は、10月1日から45日間の予算執行を可能にする「つなぎ予算」案を可決しました。共和党のマッカーシー下院議長が、同党のみで投票すべきとする党内強硬派の主張を退け、民主党の圧倒的な支持を含む超党派の賛成で成立することとなりました。連邦政府機関の閉鎖が確実な情勢でしたが、土壇場で回避できました。

法案は11月17日までの暫定予算。下院が335対91で、上院が88対9で可決し、その後バイデン大統領が署名し成立しました。

予算が通らず、4回目となる連邦政府機関の閉鎖は確実とみられていました。閉鎖されると、政府職員400万人のほとんどが無給となり、国立公園から金融規制当局まで、さまざまな連邦政府サービスが停止することになっていました。

下院でつなぎ予算を支持した民主党議員は209人と共和党の126人を大幅に上回りました。

ただ、ウクライナ支援が除外されたことは、少なくとも当面、ゼレンスキー大統領にとっては痛手です。ゼレンスキー大統領は先週、バイデン米大統領や議員らと会談し、F16戦闘機や、長距離ミサイルシステム「ATACMS」など、新たな兵器システムの供与を要求していました。

バイデン大統領は「ウクライナに対する米国の支援が中断されることは、いかなる状況においても許されない」と述べ、マッカーシー下院議長がウクライナ支援策を別途可決することを約束したと付け加えました。

しかし、アメリカの新会計年度が始まる10月1日までにアメリカ連邦議会が新たな歳出法案について共和・民主両党が合意に至らなければ、連邦政府の多くの部分が閉鎖を余儀なくされところでした。アメリカの連邦議会は、会計年度ごとに新たな予算案を可決しなければいけません。

いわゆる、この「つなぎ予算」が成立しなければ何が起きていたのでしょうか。
議会が予算案で合意できなければ、ホワイトハウスの行政管理予算局(OMB)トップが連邦政府全体に、閉鎖を開始せよという指示を出すことになっていました。

(政府機関への影響)
軍と法執行機関の制服組は任務を継続するようです。各機関が過去に公表した政府閉鎖を巡る計画によれば、国土安全保障省など一部の機関では多くの職員が出勤し続ける可能性が高く、例えば商務省では大半の職員が帰宅を命じられます。

ただし、ホワイトハウスはかなり広範な裁量を持ち、職員を仕事に呼び出したり、自宅で待機させたりすることができるそうです。

出勤にせよ自宅待機にせよ、政府機関の閉鎖中、約450万人いる連邦職員は誰も給与を受け取れません。2019年に成立した法律に基づき、政府機関の再開後、職員に対する未払い賃金が補償されます。
必要不可欠な政府サービスの多くは、閉鎖中も継続されます。米国債の元利払いは行われます。社会保障制度の給付金小切手は配送されるし、郵便物も届けられます。

その他の日常的な政府業務、例えば、一部の食品検査や中小企業への融資承認などは、一時的に停止する可能性があります。

(政府の請負業者への影響)
政府職員と政府の請負業者は、最も深刻な影響を受ける可能性がある。2019年には一部の公務員が請求書の支払いに窮するケースが発生し、連邦政府と契約を結ぶ業者は請求書が処理されなかったり、政府の建物から閉め出されたりした。政府職員と異なり、請負業者は閉鎖中に失った仕事の報酬を補償されないようです。

(旅行者への影響)
旅行者が足止めされることはありませんが、遅れや混乱に直面する可能性はあるようです。2019年の政府閉鎖中には、運輸保安局(TSA)の多くの職員が給与の支払い停止を受け、出勤を取りやめました。その結果、全米各地の空港で待ち時間が長くなる事態となりました。少数の航空管制官が一部の空港で「病欠」したことにより、航空交通に障害が起きたこともあります。たとえ短い閉鎖であっても新人管制官の研修が中断され、人員不足解消の取り組みが大きく後退しかねないようです。

米国入国者をチェックする税関・国境警備局(CBP)では、2022年に公表された政府閉鎖を巡る計画によると、大半の職員が引き続き業務にあたる見込みのようです。

(国立公園・国立博物館)
政府機関閉鎖が数日以上にわたり続く場合、多くの国立公園や博物館は閉鎖するか運営業務を縮小する公算が大きいとのこと。詳細は公園ごとに異なる可能性があります。

(学生ローンの返済)
政府が提供する連邦学生ローンの返済猶予措置が終わり、借り手は10月1日から返済を再開することになりますが、それが政府機関閉鎖の開始と重なる可能性がありました。それでも借り手は返済を行う必要があります。

(経済への影響)
米政府支出は国内総生産(GDP)の約4分の1を占めています。突然その支出が鈍化すれば、またそれが数週間続くとなればなおさら、経済に目に見える影響を及ぼす可能性があります。
一部の資産によれば、政府閉鎖によってGDP成長率が年率換算で毎週0.2ポイントずつ押し下げられると予想。2019年に5週間続いた一部閉鎖の後、米議会予算局(CBO)は経済損失が約110億ドル(現在のレートで約1兆6000億円)生じたと推計。このうち30億ドルは取り戻せないとのことです。同年の場合、一部機関はすでに予算を確保していたため、業務を停止しなくてもすみました。

以上が、つなぎ予算が成立しなかった場合の影響です。

連邦政府の閉鎖は、上下両院が10月1日の会計年度開始前に承認しなくてはならない政府支出のうち、約30%について合意できない場合に起きることになっていました。今回のつなぎ予算成立で、少なくとも今回は連邦政府の閉鎖は免れました。しかし、この法案は11月17日までの暫定予算です。こうした騒ぎは、つなぎ予算の期限が切れる45日後に再び繰り返される可能性が高いでしょう。共和党と民主党、そして共和党内部で、政府支出の程度や政策をめぐる根本的な意見の相違が解消されていないからです。

短期的法案の可決のために民主党票に頼るというマカーシー連邦下院議長の決断は、強硬右派が下院で反乱を起こすきっかけになる可能性があります。マカーシー議長を指導者の座から排除しようとする強硬派が、今後いわゆる「立ち退き動議」を提出するかどうかが注目されます。

マカーシー議長は9月30日の記者会見で、自身に反発する議員に対し、「議会には大人がいるはずなので」、「私に対して動議を出したいなら、そうすればいい」と挑戦的に述べました。

米経済はすでに高い金利や自動車労働者のストライキ、連邦学生ローンの返済再開などを背景に、秋に入って不透明感に覆われています。どうなるのでしょうか。

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