Sunday, October 8, 2023

イスラエル・パレスチナ武装勢力間の衝突

イスラム組織ハマスが10月7日の大規模攻撃で狙ったのは、イスラエルだけではないようです。この地域では、米国がイスラエルとサウジアラビアの関係正常化を後押しするなど新たな安全保障秩序の構築に向けた動きが活発化しており、ハマスにはパレスチナ国家樹立への希望を脅かしかねないこうした動きにくさびを打ち込む狙いがあったとみられています。ハマスを支援するイランも、警戒感を強めていました。

米国は、サウジとの防衛条約締結などを見返りにサウジとイスラエルの国交正常化を進めています。

パレスチナ当局者によると、イスラエルを攻撃しハマスの武装集団のメッセージは、イスラエルが安全保障を望むならばパレスチナ人を無視してはならず、サウジアラビアとのいかなる合意もイランとの緊張緩和が崩れることになる、というものです。

ハマスの指導者イスマイル・ハニヤ氏は、カタールを拠点とするテレビ局アルジャジーラで、アラブの国がイスラエルとの間で結ぶ正常化の合意により、この衝突が終わることはないと述べました。

イスラエルにすり寄りつつあるサウジアラビアや、イスラエルを支援して正常化を後押ししている米国に対するメッセージでしょうか。

イスラエルの占領下にあるヨルダン川西岸では今回の大規模攻撃の数カ月前から、イスラエル側の取り締まり強化、パレスチナ市街地での攻撃、パレスチナ人集落へのユダヤ人入植者の襲撃など、暴力が激化していました。ネタニヤフ首相が率いる強硬右派政権の下でパレスチナ人が置かれた環境は悪化し、和平への努力は何年も停滞しています。

一方で、サウジアラビア側は米国との防衛条約締結に強い決意を持っており、パレスチナ人に有利な譲歩を引き出すために正常化の合意を遅らせることはないと思われます。

レバノンにおけるハマスの指導者、オサマ・ハムダン氏は、10月7日の大規模攻撃により、イスラエル側の安全保障上の要求を受け入れることで平和が実現することはないとアラブ諸国は理解すべきだ、と述べたようです。

10月7日に行われたハマスによる攻撃は、イスラエルがエジプトとシリアから攻撃を受けた1973年の第四次中東戦争の開始から50年の節目に行われました。

1973年以降、エジプトとイスラエルは平和条約を結び、複数ののアラブ諸国もイスラエルとの関係を正常化させました。しかし、パレスチナ人は国家樹立の夢はむしろ遠のいています。

ハマスの行動は、パレスチナの問題は国交正常化交渉の中のサブトピックの1つとして扱われるべきではないということをサウジアラビア側に明確に示したのでしょうか。

ネタニヤフ首相は以前、イスラエルとアラブ諸国の和平合意について、パレスチナに拒否権を持たせるべきではないと述べていました。

一方のイランは、パレスチナ人による自衛の行動だと表明。最高指導者ハメネイ師の顧問は、イラン政府は「パレスチナとエルサレムが開放されるまで」パレスチナの武装勢力と共にあり続けると述べました。

イランは中東一帯で数々の武装勢力を支援しており、ガザのほかレバノンやリア、イラク、イエメンで存在感を高めています。

イエメンの親イラン武装組織フーシ派は先週、サウジアラビアとの国境沿いにバーレーン軍兵士を攻撃して4人を殺害しました。

今回のパレスチナ武装勢力の攻撃は、米国とサウジアラビア、イスラエルの間で画期的な合意が成立するのを阻止する狙いがあったのかもしれません。

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