Thursday, December 29, 2022

ウォール街、今年のボーナスはゼロ?

ニューヨーク中心部マンハッタンにある金融街、ウォール街の投資銀行や証券会社などで働く従業員には、日本の企業のようにボーナスがでます。


昨年(2021年)は、ウォール街の平均ボーナスは、平均で25万7500ドルと2割増加し、2006年以降で最高額となりました。株価が世界中で最高値を更新する中、大手銀行が扱う取引やトレーディング活動が記録的な水準に達したことが賞与を押し上げました。相次ぐ新規株式公開(IPO)や記録的な引き受け手数料収入を追い風に、収益が拡大したことが背景にあったようです。


ウォール街の今年のボーナスはどうなのでしょうか。


ウォール街の投資銀行や証券会社などで働く従業員が受け取るボーナスは昨年より大幅に減る見通しと言われています。厳しい経済情勢で証券取引や引き受け業務が圧迫されたからです。


ウォール街の金融各社の収入が今年ほど激減した年はありません。ウクライナ戦争やインフレ、米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めにより、企業は合併・買収(M&A)や上場のペースを落とし、投資銀行業務に打撃を与えています。ディールメーキングの低迷で人材争奪戦が終わりを迎え、報酬設定では再び企業優位となっています。


合併・買収(M&A)と株式・債券発行にかかわる助言サービスの手数料収入は前年の同じ期間に比べて40%余り減少。金額にして500億ドル(約6兆7000億円)超が吹き飛びました。金額ベースでは金融危機を上回る史上最大の減少幅です。


このため、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループなどの金融大手はボーナスの総額を約30%減らす計画があると言われています。ゴールドマン・サックス・グループでは削減幅が約40%に達する見通しだそうです。


今年は特に増資と新規株式公開(IPO)が不振だったため、金融サービス業界に携わる銀行員のボーナスが約45%減少すると予測されています。M&A助言部門では20~25%の削減が見込まれています。


昨年(2021年)は当たり年で、企業トップが相場上昇を好機と捉えて買収、上場、低利借り入れを進めました。当時、金融機関のトップらはこれが一時的なブームのようだと警告していましたが、今年の落ち込みは予想より厳しかったようです。


一方、金融機関でもトレーダーの見通しは、比較的明るいと言われています。相場は大きく下落していますが、金利上昇で特に債券と為替取引の出来高が増えているためです。債券トレーダーのボーナスは10~15%増加する見込みなんだそうです。株式トレーダーでは横ばいが予想されています。


ウォール街のバンカーは年間報酬の相当部分をボーナスで受け取るのが通例です。幹部陣は年間を通じて収入の一部をボーナス用として取り置き、数カ月かけて各従業員にふさわしい金額を査定します。最終的にボーナス全体の予算が確定するのは年明けで、1月下旬に各従業員に支給額を通知する例が多いです。


業況が低迷し景気後退が迫っているとの見方もある中で、金融機関は人員削減を再開しました。ゴールドマンはコンシューマーバンキング、投資銀行、トレーディングなど多くの部門で数千人を削減する計画です。モルガン・スタンレーは先ごろ人員の約2%に当たる約1600人を解雇しました。


業績不振の銀行従業員の一部はボーナス支給前後に辞職に追い込まれる可能性が高いとも言われています。


今回のボーナス支給にあたっては「ボーナスゼロ」という露骨な手法がより頻繁に使用されるものと噂されています。これは職業上の展望が暗いとして従業員に引導を渡す慣行です。業績の劣っている従業員は既に警告を受けているようです。この憂き目に遭ったバンカーはすぐに辞職する傾向があります。


来年(2023年)も株式による資金調達とM&Aの低迷が続けば、人員削減が拡大しそうです。


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