ドナルド・トランプ大統領の第2次政権では、連邦政府職員の大幅なリストラが実施され、レイオフや政策転換が広がっています。こうした変化の中で、政治任用職員とキャリア職員との溝がより鮮明になっているようです。
大統領によって選ばれた政治任用職員は、大統領の裁量で職務を遂行し、上級政府職員が多いです。彼らは政権のアジェンダを遂行するのが仕事です。
これとは対照的に、キャリア公務員は公務員の保護を受けられる永続的な地位を持ち、その上の政治任命権者が決めた政策を実行するのが仕事です。
アメリカは、1880年代に、現政権が政府内のすべての職員を任命できるという猟官制から、キャリア公務員制度へと移行しました。この考え方は、政府の業務を遂行する恒久的な政府、または恒久的な官僚機構を持つというものです。例えば、小切手の支給や国勢調査の実施など、政府が行うあらゆる業務がこのキャリア官僚制度によって管理されます。彼らは公務員としての保護を受けており、政策を決定する立場にはありません。大統領政権によって定められた政策に従って業務を遂行しています。
連邦政府の職員は約200万人おり、政治任用職員とキャリア職員は、どこかの時点で一線が引かれます。その線は、「政策を決定する者」と「連邦政府の使命を遂行する者」の間にあるものでしょうか。この議論は、トランプ政権が最も上級のレベルにおいて、政治任用職員ではなく、特定のキャリア官僚が政策を遂行するのではなく、政策を決定しようとしていたと感じたことに端を発しており、そこで意見の対立が生じたようです。
トランプ大統領は2月18日、大規模な人員削減を実施するよう各省庁に求める大統領令に署名しました。これに伴い、テック億万長者のイーロン・マスク氏が率いる政府効率化省(Department of Government Efficiency, DOGE)は、連邦航空局(FAA)、教育省、退役軍人省、エネルギー省など、さまざまな連邦機関での大量解雇の実施に重要な役割を果たしました。
キャリア公務員は大きな雇用保護を受けていますが、だからといって行政機関のトップである大統領が職を削減できないわけではないようです。個人を政治的に標的にしない限り、職の削減は可能としています。
また、トランプ前大統領は、公務員としての保護を得ていない試用期間中の職員の大部分を解雇するよう連邦機関に指示しました。人事管理局(OPM)は試用期間は採用プロセスの延長であり、永久的な雇用が保証されているわけではないとしています。各機関は、最近の採用凍結を受けて独自の対応を進めています。
これは、大統領が連邦政府の規模を縮小しようとした初めての事例ではありません。
ロナルド・レーガン大統領も同じ目標を掲げ、特に環境保護庁(EPA)やエネルギー省などの規制機関の人員を削減しました。
ビル・クリントン大統領も連邦政府の規模を縮小する方針を打ち出し、1993年に大統領令を発し、各機関に対し10万の連邦職を削減するよう指示しました。当初のクリントン大統領の大統領令では労働力の4%削減が求められていましたが、実際には10%の削減が行われました。 1996年の一般教書演説で「大きな政府の時代は終わった」と有名な宣言を行いました。