Saturday, October 5, 2024

次女の高校時代の研究論文の査読論文誌(JEI)への掲載承認(その2)

次女の高校時代の研究論文が、査読プロセスを経て、ようやく「Journal of Emerging Investigators(JEI) 」という格の高い研究論文誌への掲載が承認されました。


では、次女の論文の研究とは、どのようなものでしょうか。

研究のタイトルは、「代替繊維染料: PMMAナノ粒子の合成と応用による構造的着色」です。


巷に溢れる洋服の着色は、合成繊維染料が使われており、その過程で有毒な廃水を放出し、繊維工場周辺の水域の溶存酸素濃度を低下させるなど、地球汚染の最も大きな要因のひとつといわれています。

ここで次女は、環境にやさしい着色方法、すなわち、有害な化学成分を含まない、繊維への構造的着色を開発できないかについて研究しました。


次女は、構造色を作り出すナノ球体を合成し、布地にスプレーコーティングすることによって、布地を着色しました。その際、より毒性の低いポリメチルメタクリレートナノスフェア(PMMA)の様々な構造色を作り出すことができるという仮説を立てました。蒸留水、メチルメタクリレート、および2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン二塩酸塩)開始剤を不活性雰囲気下で撹拌することにより、PMMAナノスフェアを合成しました。


PMMAを調製しスプレーコーティングする最適な方法は、遠心分離し、PMMA/水溶液とカーボンブラックを100:1の割合で混合し、得られたPMMA粒子を布地に5層にスプレーコーティングするというものでした。


PMMA粒子は布地上で高い耐久性を示しました。 蒸留水、メチルメタクリレート、開始剤の量を変えることにより、赤紫、紫、青、ターコイズ、緑、黄緑などの色が得られました。


様々な色のナノスフェアを合成し、布地に塗布することで構造的な発色を実現することに成功し、ナノスフェアを布地に塗布する方法を最適化することで、最も彩度の高い色を実現したようです。


次女の研究の成果は、PMMA粒子を用いた構造的着色は、染料に代わる将来有望な無公害の代替品であることを示唆しているようですので、いつか、世の中の役にたつ日がくるに違いありません。

次女の高校時代の研究論文の査読論文誌(JEI)への掲載承認(その1)

デューク大学の学部2年生となった次女に朗報が届きました。


次女は、高校時代に「The 2022 National JSHS(Junior Science and Humanities Symposium)」という全米大会で「化学」部門第3位となりましたが、その時の研究論文が、高校生向けの査読論文誌への掲載が承認されたとの連絡を受けたそうです。


その論文誌の名前は、「Journal of Emerging Investigators(JEI)」です。


JEIは、STEM関連を研究している世界の高校生に最も人気のある出版物の一つです。 その人気の理由の一つは、このジャーナルの厳密さと背景です。


2011年、ハーバード大学の大学院生サラ・ファンクハウザーさんが、ハーバード大学医学部の大学院生仲間に、高校生たちに研究発表の場を提供するための出版物のアイデアを持ち込みました。その理由は、その当時、世界で中高生の研究発表を専門に扱う科学雑誌は存在せず、しかも無料で、生徒が自分の科学について批判的思考をするための査読プロセスも利用されていなかったからだそうです。彼女は有志の大学院生を募り、このジャーナルを立ち上げました。そこからこのジャーナルは、独自の研究を行う高校生にとって最も重要な出版物のひとつに成長しました。このオープンアクセス・ジャーナルは、世界の高校生を対象とした最も厳格な査読プロセスを誇っており、他のどのジャーナルよりも格が高いものです。以来10年以上、ジャーナルは成長し続け、ハーバード・メディカル・スクールから出発したこのジャーナルは、急速に他校にも拡大し、大学院生のボランティアによって運営され続けています。研究ジャーナルは現在までに600本以上の論文を発表しています。


上述の通り、JEIに論文掲載が認められるためには、審査プロセスが極めて厳しです。


JEIへの論文の投稿は、初回投稿時に中学生または高校生(6~12年生)であり、原稿の初回投稿は、学生著者が大学に入学する前に行わなければならないという条件があります。最も重要なこととして、JEIはすべての原稿にシニアメンターを最終著者として含めることを要求しています。 この指導者は常勤の研究者である必要はなく、高校の先生でもかまわないそうです。


JEIに投稿して受理されるには、仮説を立ててオリジナルの研究を行う必要があります。 文献レビューや理論論文を投稿することはできません。 これは、JEIが、学生が何か新しいことを発見することよりも、厳密な科学的プロセスに従うことに重きを置いているからです。科学的なトピックをレビューしたり、単に発明を紹介したりするような論文は、受理されない作品の一例です。 特に、COVID-19の疫学、COVID-19の管理、検出、治療、予防、およびSARS-CoV-2の生物学に焦点を当てた、またはそれらに関連する原稿は受け付けません。また、化学療法の進歩の歴史をたどる文献レビュー、数学の定理を紹介する研究、真理の意味に関する哲学的論考、最良の政府形態に関する理論論文などは受理されません。


JEIが論文を受理するためには、それぞれA)仮説があり、B)その仮説に答えるために既存のデータを分析するか、新しいデータを収集していることが重要です。


論文の投稿と審査のプロセスについては、JEIでの審査と出版プロセスには平均して7~8ヶ月かかるそうですが、次女の場合は、約14ヶ月かかりました。


Journal of Emerging Investigators (JEI)では、若手科学者が研究、出版、査読、そして他の研究者の研究を読むことを通して科学を実践することが重視されています。中高生であっても、科学者としての自覚を早い段階で持つことは、生徒が夢を追い求める力をつける上で重要です。


JEIは、出版プロセスにおける緊密な指導を重視しており、一流研究大学の博士課程の学生と、将来科学者の道を歩む可能性のある中等教育課程の学生との有意義なつながりを可能にしています。 


ともあれ、次女は、高校時代の研究論文が、世界で極めて格の高い若者向け研究論文誌に掲載されることが決まり、かなり達成感があるようです。今も、二つの論文を手掛けており、次は、大人の科学者向けの論文雑誌への掲載を目指しているようです。


親としては、自分のことのように喜び、次女を誇りに思いました。

Tuesday, October 1, 2024

次女のデューク大学における研究活動

次女は現在、ノースカロライナ州のデューク大学2年生で秋学期を過ごしています。

彼女は、化学関連でこれまでいかなる研究をしてきたのでしょうか。次女は、自分のしたい研究を思う存分して、とても充実した大学生活を送っているようです。子の幸せは親の幸せなので、本当に感謝しかありません。

1 SPIRE奨学生
 大学1年の秋学期(2023年8月)から、SPIRE奨学生に選抜されています。SPIRE奨学生は、 キャリアパス構築のために、教授陣、卒業生、業界リーダーたちとのネットワークを確保するための組織です。STEM 分野での専攻およびキャリアに関心を持つ学生を対象に、200名の応募者の中から選抜された20名の集団です。SPIRE奨学生は、関心のある研究室で優先的に研究ができ、夏休み期間に研究する場合、家賃代もカバーしてくれます。

2 研究助手
 大学1年時の春学期(2024年1月~5月)に、ヘザー・ステイプルトン博士の研究室 で 研究助手を務めました。ステイプルトン博士の研究室は、デューク大学ニコラス環境大学院の毒性学および環境保健に重点を置く分析化学研究室です。

3 大学1年終了時の夏季期間のインターンシップ(分析化学コア・インターン)
 次女は、大学1年終了後の夏休みの期間(2024年6月~7日)、大学の近くにアパートを借りて、デューク大学「スーパーファンド研究センター 」で分析化学に関するインターンを務めました。

4 学部2年時の研究
 大学2年の秋学期(2024年8月)から、学部研究として、「生物多様性保全のためのプラスチック汚染の生物浄化」についての研究を始めたようです。

5 研究技術者として
 同じく大学2年の秋学期(2024年8月)より、リー・ファーガソン博士の研究室で研究技術者(Laboratory Technician)として研究に従事しています。