米連邦下院では、議長を選出できない異例の事態が続いています。
米連邦下院で、昨年11月の中間選挙で多数派を奪還した共和党のマッカーシー院内総務は、1月3日に行われた投票で過半数の獲得に失敗し100年ぶりの再投票となりました。同日、更に2回投票が実施されましたが、前日に続き過半数を得られませんでした。
2日目となる翌1月4日の投票に先立ち、トランプ前大統領が自身が立ち上げたSNS(交流サイト)に「偉大な共和党下院議員全員がケビン(マッカーシー氏)に投票する時だ」と投稿し、結束を促したものの、約20人の共和党員が造反し、党内の分裂が浮き彫りとなったようです。同日、更に2回投票しましたが、決着はつきませんでした。
マッカーシー院内総務の支持者らは、投票を繰り返せば反対派が断念すると期待していたようです。
マッカーシー院内総務が獲得した票数は201票と、議長選出に必要な218票を下回っています。造反した共和党議員20人はフロリダ州選出のバイロン・ドナルズ下院議員に票を投じ、1人は特定の候補者を支持しない意向を示しました。民主党は212人全員が同党のジェフリーズ議員に票を投じました。
1月4日の投票結果は3日の投票結果とほとんど変わらず、マッカーシー院内総務が議長の座を獲得するだけの十分な支持を党内で得られるか疑問が強まっているようです。マッカーシー院内総務に反対する議員らは同院内総務に議長選への立候補を取り下げるよう呼び掛けているとのこと。
1月3日および4日は、計6回の投票を行いましたが、議長が選出されなかっため、マッカーシー下院院内総務はその後、自身の下院議長就任に反対する同党議員と協議しました。しかし、事態を打開することはできませんでした。
下院は同日の審議を終了し、再開直後に翌1月5日正午まで休会することを採決で決めました。
バイデン大統領は下院議長人事の難航について「みっともない」とし、「彼らがしっかりと行動することを願う」と記者団に述べました。
議会では、民主党の協力を得て穏健派の共和党下院議長を選出する案も浮上しているようです。
マッカーシー院内総務が議長選への立候補を辞退した場合、以下が候補として名前があがっているようです。
バイロン・ドナルズ議員(フロリダ州)。4回目と5回目の投票でマッカーシー院内総務の反対派20人がドナルズ氏を支持しました。当選には程遠いですが、保守派の中には同氏がコンセンサス候補になることを期待する議員もいるようです。当選すれば、初の黒人下院議長となります。
スティーブ・スカリス議員(ルイジアナ州)。現在の下院院内幹事で、マッカーシー院内総務のナンバー2。スカリス院内幹事はマッカーシー院内総務を支持する姿勢を崩しておらず、議長就任は望んでいないとされています。
ジム・ジョーダン議員(オハイオ州)。保守強硬派グループ「下院自由議員連盟(フリーダム・コーカス)」の共同創設者。現在も思想的には党内右派に属していますが、近年は党内で権力のある地位に就き、マッカーシー院内総務の盟友となっています。
下院議長選は過半数を獲得する候補者が現れるまで繰り返し行われ、議長が決まらないと、法案審議どころか、下院の新議員の就任宣誓を含む議事を進めることができません。